消費税の経過措置(2)─短期前払費用

消費税の経過措置について、資産の貸付等の留意点を書きましたが、今回は短期前払費用について留意すべきことについてまとめます。(出典 税務通信No.3252) 

法人税にて「短期前払費用」(いわゆる一年間分を年払いした場合の費用)はその支出事業年度で損金算入できます。(年払い家賃や雑誌の年間購読料など)(法基通2-2-14)

消費税においてはその「短期前払費用」にかかる課税仕入は特例で支払った課税期間で仕入税額控除ができます。(消基通11-3-8)

ここで、消費税の経過措置の基準日(平成25年10月1日)以後の年間契約(平成25年10月に1年分(平成26年9月分まで)について平成26年4月分以降対応分は消費税8%で支払う)で法人税上「短期前払費用」を適用した場合の仕入税額控除について以下の通り取り扱いが変わりますので注意が必要です。

<平成26年3月決算の場合>

10月~3月分 5% 当期控除

 4月~9月分 8% 翌期控除(前払消費税として処理、以下同じ)

<平成26年1月決算の場合>

10月~1月分 5% 当期控除

 2月~3月分 5% 翌期控除

 4月~9月分 8% 翌期控除

<平成26年5月決算の場合(4月以降決算法人は同じ、前払消費税の処理不要)>

10月~3月分 5% 当期控除

 4月~9月分 8% 当期控除

 

マイナンバー制度閣議決定

昨日「マイナンバー制度」について閣議決定がされました。2016年1月の導入に向け今後国会にて議論されるもようです。

マイナンバー法案のポイントは以下の通りです。

・住民票コードから国民一人ひとりに番号をつける

・番号を本人に知らせたうえ、番号情報を入れた顔写真付きのICカードを配る

・納税や年金の給付申請など当面は行政手続きに利用

・2015年中に番号を通知、16年1月から利用開始

・17年1月から国税庁や日本年金機構などの間で個人のデータを交換

・17年7月から地方自治体も情報交換に参加

・番号を扱う行政機関を監視、監督する「特定個人情報保護委員会」を設置

・法施行後、3年後をめどに番号の利用範囲の拡大を検討 (出典nikkei.com)

とのことです。

いい制度だと思いますし、導入に賛成です。複数の行政機関での手続きが簡素化されたり、年金の適正な徴収や給付の状況、納税の履歴の管理など、その役割は大いに期待されるものです。特に年金や税金の徴収にあたっては公平性が向上することが期待されます。

ただ、今後の「利用範囲の拡大」においては、政府や行政が想定しているものが多々あるでしょう。

たとえば・・・(私の想像ですのであしからず)・・・

・医療受診、投薬などの履歴 ・生活保護や障害者などの情報 ・金融機関登録情報(預金及び借入情報) ・就業及び就学情報 ・不動産や車両など所有情報 ・消費者購入履歴 ・交通違反履歴情報 ・前科など刑事罰履歴情報

・・・などなど。

あたりまえの話ですが、個人情報のかたまりとなり得ますので、利用範囲の拡大には

細心の注意を払ってもらいたいものです。 情報流出の制御なくして、導入や利用範囲の拡大があってはなりません。

会社員が支出した仕事関連費用

いわゆる「特定支出控除」の範囲が平成25年から拡充されます。これに伴って今まであまり使われていなかったこの制度の利用者数が飛躍的に伸びる可能性があります。

従来ですと、

・通勤費 ・転勤転居費 ・研修費 ・職務に必要な資格取得費 ・単身赴任帰宅旅費 などの費用を支出した場合に、その合計額がその者の給与所得控除額を超えた場合、その超えた部分に相当する金額を特定支出控除として確定申告にて所得控除できるという制度でした。

平成25年からはこの制度に次の拡充があります。

1)適用判定基準額の引き下げ

  給与所得控除額の2分の1を超える部分(年収1500万円超の場合は

  125万円)について適用あり。

  従前の制度「給与所得控除額を超える部分」から大きく拡充されました。

2)対象費用の範囲拡充

  ①弁護士、公認会計士、税理士など資格取得費

  ②仕事関連必要経費(上限65万円)で以下のもの

   ・新聞図書費(雑誌、電子書籍など含む)

   ・衣服費(スーツ、作業着、靴、ネクタイ、シャツなど)

   ・接待交際費(飲食、贈答など) 

    かなり範囲は広がりました。具体的に適用可能かどうかは顧問税理士な

    ど専門家へお問い合わせください。

なお、確定申告の際には確定申告書に

・特定支出に関する明細書 ・給与支払者(会社)の証明書 ・領収書、レシート ・給与所得の源泉徴収票 などの添付または提示が必要となります。

特に「会社の証明書」、会社がどこまで柔軟(逆に厳密に?)に対処してくれるかがポイントですね。

債務超過会社を吸収合併する

債務超過会社を吸収合併する」というスキームを考えてほしいとのご依頼があり検討してみたのですが、組織再編税制及び欠損金の繰越税制とリンクするため結構難解なテーマでした。

結論としては「合併は可能」ということに至ったのですが、以前(10年ほど前)に遡れば赤字法人や債務超過法人の吸収合併は不可能という通説でした。それが現在では可能です。もちろん諸条件があります・・。

また被合併法人のあるいは合併法人の欠損金の繰越の問題もありますが、法人税法上の「適格合併」である場合には欠損金の繰越が可能です。

唯一気になった点が、「合併比率」の問題です。被合併法人において債務超過である場合には株価は実質ゼロ円となります。この場合、無対価合併(被合併法人の株主に対して株式またはそのほかの資産の交付を伴わない方式)という方法があるのですが、この手法によると上記の「適格合併」とならないので注意が必要です。

「適格合併」の大前提として、被合併法人の株主に対して合併法人の株式を交付することとなっているためです。よってこの場合には欠損金の繰越ができません。

なので100対1とか1000対1など極めて交付割合の低い合併比率によって無対価合併を回避する方法が考えられます。ただしこの場合も、合併法人の株主から被合併法人の株主へ贈与があったものとみなされ贈与税が課税されますから注意が必要です。(本来ならば1対ゼロとなりますから・・)

いずれにしても債権者である(一般的には)金融機関の稟議次第ですので、そのほかの利害関係者と綿密に打ち合わせの上で実行すべきです。

 

交際費課税緩和・・で思うこと(2)

最近のアクセス解析を見てみますと、「交際費」「800万円」などの検索ワードがよくヒットしているようです。結構皆さんの興味を引いているようですね。

ですので「交際費」について第二弾を書いてみようと思います。

前回書きました通り、大法人(資本金1億円超)に関しては交際費について全額損金不算入となります。やはり景気浮揚策であるならば、大法人にも損金算入枠を開放すべきと思います。

 今回は、交際費に含まれない主な費用について書いてみたいと思います。

こちらは中小法人のみならず大法人にも該当する項目ですので注意が必要です。

1)専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要

  する費用

2)1人当たり5000円以下(役職員間の飲食費は除きます。)の飲食費

3)次の費用

  ①社会事業団体等への寄付金

  ②広告宣伝のための費用

  ③売上割戻し等

  ④福利厚生費

  ⑤従業員に対する昼食等の費用

  ⑥カレンダー、手帳、扇子、うちわ等を贈与する費用

  ⑦会議に関連して通常要する茶菓、弁当等昼食の程度を超えない飲食物の接

   待に要する費用

  ⑧不動産業者の現地案内、新製品・季節商品等の展示会等への招待、商品

   知識普及のための工場見学時の交通・宿泊・食事に関する通常の費用

 となっています。曖昧なものもありますが、実務上は見落としがちなものもありますので具体的には顧問税理士へ相談してください。

このなかで取り上げたいのは、上記2)の1人当たり5000円以下~の話です。比較的最近できた(平成18年4月1日以降開始事業年度より)規定ですが、5000円という金額がいかにも中途半端で微妙なラインなんですよね。

3)⑦の「会議費」に毛がはえた程度の金額ですし、いっそのこと10000円まで引き上げてもらえたらどうですかね。おいしいもの食べられますし、ちょっとうれしい改正になります。いかがでしょうか。

明日、世界が滅びるとしても・・・(開高健さん)

車で移動中、NHKで国会中継していたので視聴していました。衆議院予算委員会で質問に立った石原慎太郎議員の発言の中で、開高健さんの言葉(もとはマルティン・ルターのものらしい)で、

「明日、世界が滅びるとしても 今日、あなたはリンゴの木を植える」

とご紹介されていました。

財政や環境問題について次世代へツケをまわさないという気持ち(心がけ)が大事とおっしゃっていました。

 ちょっと感動を覚えました。

 

交際費課税緩和・・で思うこと

みなさんご存知のとおり、法人税について、平成25年4月1日以降開始事業年度(予定)から交際費課税が緩和されます。

年間の定額控除限度額は600万円から800万円に拡充され、さらに定額控除限度額内の損金算入割合が90%から100%となります。

たとえば年間700万円交際費を支出した場合には、

(旧法)(700万円-600万円)+(600万円-600万円×90%)

    =160万円(交際費損金不算入)

(新法)700万円<800万円により全額損金算入

となります。

旧法では年間で支払った交際費の金額が600万円を下回った場合でもその額の1割は必ず交際費の損金不算入となったわけですが、これがなくなります。まあ、結構なことですけれど。

政府は景気浮揚策の一つとしてこの減税に踏み込んだとのことですが、そもそも大法人(資本金1億円超の法人)は交際費が全額損金不算入です。

中小法人の枠内で交際費課税を緩和しても大した額にならないのではないでしょうか。年間800万円もの交際費を使うのも相当規模の大きい法人でないとその枠を使い切れませんし。(もちろん使い切る中小法人もありますが。)

景気浮揚策ならば大法人にも同様の交際費課税にしたほうがよっぽど効果があると思いますがいかがでしょうか。

銀座や北新地、祇園や栄や中洲、ススキノなど(すみません、一部の場所の記載で。)全国の飲み屋街やゴルフ場が活気づくこと間違いないですね。

 

聞く力

 

聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書)

聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書)

120万部のベストセラーを読んでみました。

全体的にエピソード系が多く、大変読みやすく興味深い半面、具体的行動としての「聞く力(姿勢?)」にもう少し踏み込んでもらえたら・・という内容でした。

特に印象に残ったところは

・相手に描く先入観にとらわれない

・話の流れにまかせる(時間を区切らない)

・安易にわかったふりをしない

といったところでしょうか。

20年以上にわたって週刊文春でインタビューや対談をされている阿川さんならではの成功や失敗談も楽しめますが、苦手なタイプとの対談当日は「会場に行きたくない」「対談の途中で帰りたくなる」など人間味あふれる記述に、「だれでも似たような心理状況になるんだなあ」と思い、ちょっとうれしくなりました。

あと、目を見て話をするというくだりがありますが、いつも心がけているものの、なかなか難しいですね。 皆さんはどうですか。